初代「ドンキーコング」の筐体がアーケードに登場してから36年、マリオのゲームは5億本以上売れ、ゲーム業界では屈指の知名度を誇るフランチャイズだ。マリオは特に2Dや3Dアクションゲームで知られているが、カートにも乗ればスポーツも万能で、RPGから格闘ゲームまで、数多くのジャンルを踏破している男だ。
10月27日、マリオの最新作「スーパーマリオ オデッセイ」はNintendo Switchに登場する。これを記念して、マリオの長い歴史を振り返り、特に印象的だった「30の転機」をピックアップした。これを前編、中編、後編に分けてお送りしているので、「オデッセイ」を待ちながらご一読いただけると嬉しい。
前編ではマリオの誕生からスーパーファミコン世代まで振り返ったが、中編ではニンテンドウ64やゲームキューブにおけるマリオの歩みを中心に語っていく。
11. 3Dで立体的になったマリオ
「スーパーマリオ オデッセイ」画像・動画ギャラリー
ソニーやセガに約2年遅れて、任天堂は1996年ついに本格的な3Dゲームを稼働できるゲーム機、ニンテンドウ64を発売した。ローンチタイトルは3本しかなかったが、そのうちに含まれていたのが「スーパーマリオ64」だ。本作は3D空間でできることを多くのゲーマーに示した作品となった。ゲームをスタートして、キノコ城の前を初めて自由自在に飛び跳ねたときは、当時を経験したプレイヤーなら誰しもが覚えているだろう。他のゲームメーカーはこれにインスパイアされ、ニンテンドウ64は3Dプラットフォーマーの豊富なゲーム機となった。3Dゲームの経験が少なかった任天堂がマリオらしいゲーム体験をここまで違和感のない形で3Dに落とし込めたのは驚異的で、「2Dに戻してほしい」という声もほとんど耳にしなかった。ちなみに本作はマリオの声が初登場するゲームでもあり、アメリカのチャールズ・マーティネーが担当した(厳密には1995年のPCゲームで、いち早くマリオの声が披露されている)。マリオはもちろん、同氏は他にもルイージ、ワリオ、ワルイージなどといったキャラクターの声を20年以上担当してきている。
12. カジュアル任天堂の原点?
1998年の年末、任天堂ファンが「ゼルダの伝説 時のオカリナ」という傑作をクリアしてほっとした頃、任天堂はマリオフランチャイズの新たな試み「マリオパーティ」を世に送りだした。この頃から、マリオはもはや単体のキャラクターやゲームシリーズではなく、ひとつのユニバースとして完成していた。マリオだけでなく、クッパ、ピーチ、ルイージ、キノピオ、ドンキーコング、ワリオといったキャラクターも確固たる知名度があり、さらにいえばキノコ王国という世界も子供たちの中でひとつの共通概念として存在していた。それをうまくひとつのゲームに落とし込んだ最初のタイトルは「マリオカート」だったわけだが、「マリオパーティ」はそれをよりカジュアルな形で実現した。「マリオの世界観は知っているけどゲームはやったことない」、「マリオカートは好きだけど全然勝てない」といった人々も、ボードゲームなら気軽に一緒にゲームが楽しめる。任天堂はWiiの時代に入るとカジュアル路線を走るようになるが、「マリオパーティ」がその一歩だった、と考えることもできる。
13. ついに格ゲーにまでなったマリオ
「マリオカート」、「マリオパーティ」、そして「スマブラ」。これはマリオのスピンオフシリーズの3強といえるが、デビューが最も遅いのは「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズで、1999年にニンテンドウ64向けに発売された。それまでの格闘ゲームはといえば、複雑なコマンドを入力することで必殺技やコンボを繰り出し、相手の体力ゲージをゼロにすることで勝利を収めることが前提だった。だが、「スマブラ」は複雑な操作よりもアイテムを使ったり環境を利用したりすることが重要で、相手をステージから突き落とすことで勝利するゲームだった。カプコンの「パワーストーン」と同時期に発売した本作はいわゆる「パーティ格ゲー」の黎明期をスタートさせた作品となった。
14. ゴルフと並んで、テニスもマリオの得意スポーツに!
2000年に発売した「マリオテニス64」は前述のスピンオフ3強ほどの人気を獲得できなかったが、バーチャルボーイで発売した「マリオズテニス」と比べれば大成功だろう。当時、サッカーや野球などのスポーツゲームはすでに高品質の3Dゲームが多かったが、テニスは3Dゲームにしづらいスポーツと見なされていた。ところが、セガの「パワースマッシュ」を皮切りに3Dでもラケットを振るのが楽しくなり、その後に続いたのが「マリオテニス64」だった。ファミコン時代から始まったマリオゴルフ(本稿ではあまり触れていないが……)に加え、テニスがマリオの得意スポーツとして定着した。