出典元:IGN JAPAN
2022年2月25日に発売されてから、今なお世界中で大ヒットを続けているアクションRPG『ELDEN RING』。ダークファンタジーな世界観とオープンなフィールドという、これまでの伝統と革新性を備えた本作は、フロム・ソフトウェアの新たな代表作だと言えるだろう。
そんな『ELDEN RING』に登場するキャラクターは、グロテスクなものから幻想的なものまで、魅力あふれるものたちばかりだ。たとえば
人面を備えた蛇の怪物や
熊のような巨大な獣など……こうした数多くのキャラクターは、一体どのような工夫のもと生み出されているのだろうか。
CEDEC 2022で行われたセッション「ELDEN RINGの大量のキャラクターモデルを制作したチームの『こだわり』自己分析」では、フロム・ソフトウェアの3Dグラフィックセクションサブリーダーである藤巻亮氏が登壇。キャラクターのモデルを制作するうえで、フロム・ソフトウェアのモデルチームが大事にしているいくつかの要素が紹介された。
今回は、このセッションの内容を辿りながら、『ELDEN RING』が誇るダークファンタジーの世界が、文字通りどのように形作られているのかを、一緒に見ていこう。
造形を捉える「観察」
3Dモデルを制作するといっても、何もないところからいきなり3Dキャラクターを生み出すわけではない。モデラーはコンセプトアートや参考資料などを観察しつつ、キャラクターの造形を行っていくことになる。
しかし、言うのは簡単でもそれを実際に行うのは難しいことだ。そこで、フロム・ソフトウェアではまずモデラ―の「観察」を補強するという。
たとえば作中に登場する大蟻の敵キャラクターで考えてみよう。
「ELDEN RING」画像・動画ギャラリー
さて、あなたはこのコンセプトアートやモデルをどのように観察するだろうか。藤巻氏曰く、人によって主に「立体」をとらえる人と「境界線と空間」をとらえる人の二つの傾向があるという。あなたは全体の色合いの変化から陰影を考える立体的な捉え方だろうか、それとも体全体のシルエットや足の空間などを平面のバランスを見る捉え方だろうか。どちらも一長一短であり、両方できる人もいるがやはり得意不得意がある。
重要なのは、これらの捉え方を意識的に使い分けられることだ。
たとえば、「立体」をとらえるのが苦手な人は部位の断面の形状を強く意識してみるといいそうだ。断面の形状に強く意識を向けることで、自然と立体を把握できてくる場合が多かったという。
逆に「境界線と空間」が苦手な人には、資料の簡素化を行えばいい。たとえばコンセプトアートにポスタリゼーションのフィルタをかけるなどしてあえて情報量を減らすことで、境界線や空間に意識が向きやすくなる。
こうした普段何気なく行っている観察という部分を意識的に変化させることで、コンセプトアートの特徴を正確に造形することにつながっているという。
モチーフ理解のカギは「飼育方法の想像」にあり
次はこちらのコンセプトアートを見てみよう。
苔の生えたザリガニのようなキャラクターで、左の大きなはさみが特徴的だ 。 さて、モデラ―はこのコンセプトアートから3Dモデルを作っていくわけだが、フロム・ソフトウェアにおけるコンセプトアートはあくまでコンセプトであり、3Dモデルの設計図ではない 。 ゆえにモデラ―は、ときにはコンセプトアートに描かれていないデティールも補完しなければならない 。 それを果たすのにもっとも重要なのは、「どれだけモチーフを理解するか」にある 。 モチーフがザリガニなど実在の生物であればなおさらのことだ 。 生物をモチーフとしている場合、その特徴をとらえるのに特に効果があったのは「飼育方法」を考えることであったと藤巻氏は語っている 。 生物の飼育方法を考えることによって、主観的に、愛着を持ち、リアルに想像できる傾向があったのだ 。 特に『ELDEN RING』モデリングチームには生物好きの人 間が多く、そういった人にとっては特に有効だった 。 これによって知識を増やし、想像を膨らませ、コンセプトアートにはない細部を想像できることが可能になったのである 。 もっと具体的に見ていくと、飼育方法を考えることから得られる生物の特徴は非常に多い 。 たとえば食生活や狩りのしかたの場合、これ自体がその生物の最大の特徴であることが多い 。