2.5次元、その先へ Vol.8 笑顔のヒットメーカー、S-SIZE・米田理恵プロデューサーが語るタンブリング&ヒプステ愛(ステージナタリー)

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出典元:ステージナタリー

日本のマンガ、アニメ、ゲームを原作とした2.5次元ミュージカルが大きなムーブメントとなって早数年。今、2.5次元ミュージカルというジャンルは急速に進化し、洗練され、新たなステージを迎えている。

【画像】THE CONVOY SHOW vol.40「パピプペポ~!」より。(他5件)

その舞台裏には、道なき道を切り拓くプロデューサー、原作の魅力を抽出し戯曲に落とし込む脚本家、さまざまな方法を駆使して原作の世界観を舞台上に立ち上げる演出家など、数多くのクリエイターの存在がある。この連載では、一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会発足以降の2.5次元ミュージカルにスポットを当て、仕掛け人たちのこだわりや普段は知ることのできない素顔を紹介する。

今回は、ドラマ・舞台「タンブリング」や「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage」を世に送り出してきた、S-SIZEの米田理恵プロデューサーが登場。笑顔がトレードマークの米田は、持ち前の推進力で数々のプロジェクトを立ち上げてきた。20年にわたるプロデューサー人生の中でも、特に影響を受けたという今村ねずみ、松田誠、植木豪らとのエピソードを交えながら、彼女が注力してきた作品を振り返る。

取材・文 / 興野汐里

■ 今村ねずみとの出会いから始まった演劇人生
ゼロから企画を立ち上げ、ゴールへと導くには並々ならぬ気力と体力が必要だが、「2.5次元、その先へ」の取材で出会ったプロデューサーたちは、エンタテインメントに情熱を注ぐ“縁の下の、パワフルな力持ち”だった。「私、ものすごくプラス思考なんですよ!」という言葉が象徴するように、今回インタビューした米田理恵プロデューサーも、エネルギッシュでタフな人物だ。

米田が2014年に設立したS-SIZEは、演劇や映画、ドラマの企画・制作から、ヘアメイク業務、撮影スタジオの運営まで、多角的に事業を展開している制作会社。現在、40人あまりの社員が在籍しており、近年では「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage」(以下ヒプステ)、「ACTORS☆LEAGUE 2021」、舞台「タンブリング」、「舞台『刀剣乱舞』」などの舞台作品や、「マーダーミステリーシアター『演技の代償』」といった配信事業の制作を担当している。

米田が初めて演劇に携わったのは、20代前半の頃。映画やドラマを手がける映像制作会社に勤務していた彼女は、THE CONVOYの今村ねずみと出会う。「韓国でTHE CONVOY SHOWの立ち上げに携わることになって、ねずみさんと1カ月くらい一緒に過ごしたんです。右も左もわからなかったので、ねずみさんからたくさんのことを教えてもらいました。周りに舞台好きのプロデューサーが多かったこともあって、もともと興味はあったんですが、そのときに演劇の面白さを知りました。ねずみさんとの出会いが私の演劇人生の始まりと言っても過言ではありません」と当時を振り返りつつ、「今でもねずみさんとの師弟関係はずっと続いているんですよ!」とうれしそうに話す。

その数年後、2006年に上演された永山たかしの主演作「スイッチを押すとき~君達はなぜ生きているんだ?~」で、米田は初めて演劇公演のプロデュースを手がけることになる。「東京芸術劇場で行われたミュージカル『テニスの王子様』の初演を観て、永山さんにぜひ出演してほしいなと思ったんです。テニミュを観たときの衝撃は今でもよく覚えていますね。学生時代、活字が好きだったのであまりマンガを読んだことがなかったんですが、『ああ、こんなにも女の子が熱狂する世界があるんだ!』と感激しました」。2.5次元ミュージカルとの出会いはもう少し先になるが、のちに米田に大きな影響を与える松田誠の作品を、彼女はこのとき目にしていた。

■ 新井順子プロデューサーと切磋琢磨した「タンブリング」
2010年、米田のキャリアを代表する大きなプロジェクトがスタートする。高校の男子新体操部を題材にしたテレビドラマ「タンブリング」を、「Nのために」「アンナチュラル」「MIU404」などで知られるTBSスパークルの新井順子プロデューサーと共に立ち上げた。「『タンブリング』はもともと、舞台化したら面白いんじゃないかと思って企画書を書いたものだったんです。初めてゴールデンタイムのドラマのプロデューサーを務めたので、大変なことも多かったんですが、同い年の新井プロデューサーと切磋琢磨しながら番組を作れたことがすごく良い経験になりましたね」。

米田の構想通り、「タンブリング」はドラマの放送直後に増田哲治(TETSUHARU)演出により舞台化され、2014年まで毎年上演される人気シリーズに成長した。「増田哲治さんとは最も多く一緒に作品を作ってきて、多くを語らなくても通じている気がしています。今でも本当に信頼している演出家の1人です」。2014年に「FINAL」が上演されたあと、「タンブリング」のカンパニーは一旦解散。新型コロナウイルスの影響で1年延期になったが、今年6月、新たなキャスト・スタッフによる舞台「タンブリング」が上演され、子役時代にドラマ版に出演した高野洸が主演を務めた。

新生「タンブリング」からさかのぼること5年、2016年に上演された高野の主演作「『ROCK MUSICAL BLEACH』~もうひとつの地上~」は、米田が初めて2.5次元ミュージカルに携わった公演であり、以前から顔なじみだった松田と本格的に仕事をするきっかけになった最初の作品でもある。「松田さんからは、2.5次元ミュージカルのことというよりも、生き方や人との接し方について教えてもらっている気がします。嵐の中でも先陣を切って進んでいくのがプロデューサーの仕事だと思っているんですが、松田さんはまさにそんな存在。誰しも『もうダメかも……』って思っちゃうときがあると思うんですが、松田さんは絶対折れないんです」と松田へのリスペクトを明かす。

良きビジネスパートナーである松田と米田は、共にアイデアマンで、持ち前の明るさでカンパニーを牽引し、それぞれが近い目線で“2.5次元ミュージカル”を捉えている。米田は「S-SIZEでは、2.5次元ミュージカルを担当させていただくことが多いですが、『2.5次元ミュージカルだから』『グランドミュージカルだから』『小劇場だから』というように、垣根を作る必要はないと思っていて。その作品が一番輝いて見える見せ方をクリエイターの皆さんが考えて作ってくださっているので、私たちプロデューサーや制作も、どの作品とも同じように真摯に向き合って、一番良い形でお客様に届けられたらと思っています」と、ジャンルにとらわれず、1つひとつの作品と対峙していると明かす。本連載で取材した際、松田も「“2.5次元ミュージカル”という言葉の一般認知度が高まった今、可能性を狭めてしまわないように、“2.5次元ミュージカル”という言葉をあえて多用しないようにしている」と話していた。

■ ヒプステはみんなの愛の集大成
近年、S-SIZEが制作を手がけている作品のうち、大きなプロジェクトの1つが、“音楽原作キャラクターラッププロジェクト”「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」を原作としたヒプステである。2019年の「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.1-」で幕を開け、今年8月には、これまでにヒプステに登場した全キャラクターが集結するライブ公演「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -Battle of Pride-」が開催された。

「私の演劇人生の第2期を象徴する存在は、植木豪さんなんです」。ヒプステに欠かすことのできないクリエイター・植木との関係を、米田はこう表現した。「豪さんは同志のような存在。彼がいなかったら今の私はいないと思います。豪さんと作品を作るうえで、芝居と新しいテクノロジーとの融合が1つのテーマになっているんですが、ダンスや歌などの基礎がしっかりできているからこそ、新しいアイデアが引き立つと思っていて。最新の映像技術を多く使うヒプステでは、基本の部分を大切にしながら、豪さんやスタッフ・キャストが話し合ってクリエーションを進めています。あと、ヒプステってみんなの愛の集大成なんですよ。原作のキングレコードさん、主催のネルケプランニングさんをはじめ、キャスト・スタッフ、お客さん……みんなの愛が集まって、あれだけ厚みのある舞台ができあがっているんじゃないかと思うんです。ヒプステは、間違いなく私の軸になっている作品の1つですね」。常に笑顔の絶えない米田だが、その中でも、ヒプステを語るときの愛情あふれる表情は特に印象的だった。

■ “相手ファースト”であること
映像制作会社でキャリアをスタートさせて約20年。クリエイターと作品を作るうえで、プロデューサーとして大切にしてきたことを尋ねると、「実は演出家って孤独なんです。だからどんなときでもそばにいることを心がけていて。プラスのことを伝えることも大切なんですが、作品を客観的に見て、『こうしたほうがお客さんに伝わりやすいんじゃないか』と、時には厳しい言葉をかけることもあります。でも、クリエイターにとって常に一番の味方でありたいと思っているんです」という答えが返ってきた。

米田の場合、アーティストはもちろん、自身と関わるすべての人を対象とした“相手ファースト”を実践している。「とにかく相手の立場に立って、相手に寄り添うこと。その人にとって唯一無二の存在になれるように、といつも社員に話しています。それから、どんなときでも笑顔でいること。どんな困難があろうとも、制作が笑顔でいることによって、クリエーションに関わるみんなを癒やせたらと思っています」。米田の思いはS-SIZEの社風にも色濃く反映され、アーティストたちの創作を日々支えている。

■ どのプラットフォームが一番魅力的に見えるか
新型コロナウイルスの影響がいまだ続く2021年、S-SIZEは松竹、カンテレと協働し、体験型推理ゲーム「マーダーミステリー」をもとにした配信演劇「マーダーミステリーシアター『演技の代償』」を立ち上げた。映画監督の三木康一郎を総合演出に迎えた本作では、歌舞伎俳優から2.5次元ミュージカルで活躍する若手俳優まで、バラエティに富んだキャスト陣が一発本番の即興演劇を繰り広げる。

「昔からなのですが、『この企画は演劇にしたら面白そうだな。これはドラマ、これは映画、これは配信』というふうに振り分けながら企画を考えることが多くて、どのプラットフォームが一番魅力的に見えるかを考えることが好きなんです。『マーダーミステリーシアター』のように演劇、ドラマ、バラエティーといった枠組みにとらわれないコンテンツを、今後S-SIZEの強みにしていきたいと思っています」。コロナ禍という困難に直面しながらも、その時代の流れに合わせ、その作品に最も適した方法を取る。米田の企画力が生かされた瞬間だった。

もちろん演劇のフィールドで実現したいこともまだまだある。「2.5次元ミュージカルには、IP(知的財産)が持つ魅力を2倍、3倍にできて、まったく違う作品に生まれ変わらせる可能性がある。これからも若い方々の力でいろいろな作品が生まれてほしいし、私自身もギリギリまで関わっていたいと思っています。今後の目標は、世界に通用する作品を作ること。海外の演劇を輸入するだけでなく、アメリカやアジア、アフリカで日本のカンパニーが公演するツアーを組めたら素敵ですよね。そのためにまず、私たち自身が楽しんで仕事をしていくことが大切だと思っています」。何事も全力で楽しみ、全力で挑戦を続ける米田の夢は尽きない。

□ プロフィール
株式会社S-SIZE代表取締役社長。ドラマ・舞台「タンブリング」、「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage」をはじめ、映画「覆面系ノイズ」、オンライン配信演劇「マーダーミステリーシアター『演技の代償』」など、さまざまな作品でプロデューサーを務める。

□ 関連公演・イベント
「『バクマン。』THE STAGE」
2021年10月8日(金)~17日(日)
東京都 天王洲 銀河劇場

2021年10月21日(木)~24日(日)
東京都 TOKYO DOME CITY HALL

2021年10月28日(木)~31日(日)
大阪府 メルパルク大阪 ホール

35th Anniversary THE CONVOY SHOW vol.41「コンボ・イ・ランド」
2021年12月10日(金)~18日(土)
東京都 こくみん共済 coop ホール / スペース・ゼロ

2021年12月30日(木)・31日(金)
大阪府 森ノ宮ピロティホール

「美少年探偵団」舞台化
2021年冬
東京都 天王洲 銀河劇場

舞台「フランケンシュタイン-cry for the moon-」
2022年1月7日(金)~16日(日)
東京都 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

2022年1月20日(木)~23日(日)
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.5-」
2022年1・2月
大阪・東京

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